「夏がはじまる日」山本達彦が奏でる色めいて艶やかな夏の音楽!1993年の名盤



夏に聴いたから好きなのか、夏のイメージに合うから好きなのか。

どちらにしても、夏が好きです。せつなくなります。うれしくなります。



夏がはじまる日」山本達彦


1993年に発売されたアルバムです。

タイトル通りに、夏が始まる予感に満ちている雰囲気たっぷり。





私が初めて聴いたのは、銀座の楽器店。

CD視聴コーナーに、ふらりと立ち寄ったときのことです。

夜だったかなあ。

まだ黄昏くらいかな。

そんな時間帯で、だんだんと人の賑わいが増えてくる頃です。



友だちと映画を見る約束をして、待ち合わせ場所にしていたんじゃないかと思います。

当時は、よく、そんなふうに楽器店を活用していました。



「夏がはじまる日」を聴いたときは、まず1曲目が、ボサノバっぽいというか、ジャズっぽいというか、ギターの弾き語りのような軽快なミディアムナンバー。

塩とコショー」です。

へえ。こんな演奏も似合うんだ、と感じました。

どちらかというと、山本達彦さんのイメージは、シンプルなピアニストでバラードが似合う貴公子。だけど音楽は色鮮やかな編曲で、きらきらしたサウンドと重厚さのバランスが見事なアーティストという印象でした。


「夏が始まる日」は、とても軽快に始まります。
私も軽く、聴いていました。

すると、一曲目が終わり、2曲目になるその瞬間。

夏が開幕です!



最高です。

一気に幕が開きました。

オープンです。

山本達彦さんの音楽を聴いていると、とびきり素敵な女性が思い浮かんでしまうのですが、このときは元気のいい夏の美少女がスカートをひるがえして舞い踊るイメージが、バン、と脳裏に浮かんだのです。

またたくまです。

脳裏の美少女はスカートのすそをつまんだり、たくしあげたりしながら踊ります。スカートの下は水着なので、もう脱いじゃうよ泳ごうよ、え、まだなの、という駆け引きのような映像が浮かびます。いやもう歌詞の世界観とは違ってしまいます。

当時の私には夏のリゾート地で少しづつ服を脱いでいって素肌を重ねたり離したりしながら、彼女の裸を堪能する時間こそが素晴らしいものだというね、そういう感覚でした。美少女であり、大人の女性。大人びた若い女の子という感じでしょうか。見透かされるくらい。だけど、自分と対等な感じ



おっと、約束の時間です。
でも、聴き終わりそうにないのは確かです。
どうしよう。
このあと映画を観るから、この音楽のことを忘れてしまったらいやだな。買っちゃえ。


そんな勢いで買いました。

夏が始まりました。




この年の夏の終わりに私は結婚するので、なにもかもが夏でリゾートで生命力みなぎっていた時季だったんだろうなと思います。


たくさんリピートしている名盤です。



とくに「MIssing Whisper」のキーボードの音色は、聞き惚れてしまうというか、酔ってしまうというのか。溶けます。本当に気持ちよく性交しているときの感動みたいに、全身全霊で気持ちよくなれる一曲です。名曲なんてもんじゃない、名曲です。なにを言っているのかわからないくらいに素敵で最高で衝動的です。


本能を呼び覚まされるというよりも、本能はそのままで理性が快楽を合理的に享受してくれるという感じです。女性の素肌を味わうのは、やはり自分の素肌です。濡れて漏れて溶けて固くなって張りつめてイクような陶酔の、ひととき。男で良かった。

私にとって山本達彦さんは『あんなふうにカッコよくふるまってみたい』と思わせる男性なので、まあ、ある種のなりきった感じというのか、山本達彦さんの音楽を聴きながら自分自身がカッコよくなっていくのが心地よかったんでしょう。


聴くとカッコよくなります。
そういう音楽です。
こればかりは、どうしようもありません。


そりゃあ、モテて当然です。私だってモテます。それが真実かどうかなんて問うのは野暮です。粋にふるまいましょうよ。本人の自己申告だけで済む世界であり、外に向けて発信するのではなく秘め事のまま隠し通す領域です。大好きな女性とセックスして気持ちよくなれることが私の命を磨き上げて、人生そのものを肯定してくれたのですから。人生最高。

若さのままに生きていて、それでOKだった。と、たとえそれが錯覚でも妄想でも、しあわせな夏だったとしか言いようがありません。実際に、最高の夏になりましたし、秋も冬も、次の春も、「夏が始まる日」のまま、かけがえのない時間が積み重なりました。


なつかしい。でも、すぐ、そこ、という感じがします。今でも

もう私は白髪だらけになっていますが、当時は黒髪の色を抜いて金や茶や赤や緑に染めたりしていたので、それも懐かしくてしかたないのかもしれません。あの固くて黒い髪質が苦手だったのに、いまでは愛おしくて仕方ないくらいです。髪は白く、細くなり、でも心だけは輝かしい夏のままで、乾いては潤いを求めて生きているのです。


思春期とは違う、大人だからこそのエロティックで洗練された快感を、音楽を鳴らしながら味わい尽くしていたんだなと思います。



夏がはじまる日山本達彦

人生の享楽に必須!最高の愛聴盤です。


written by 水瀬次郎

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